「うちの会社ブラック企業だからなぁ。」
という嘆きをよく耳にしますが、細かく話を聞いてみると確かにグレーではあるけど、ブラックというほどではない。
実はそんな会社の方が多いのです。
社員のちょっとした不満がブラックに感じるのかもしれませんが、完全に法令違反というようなブラック企業は多くはありません。
ですが、中には正真正銘本物のブラック企業という会社も存在します。
ここでは、実際に所属していた会社と目の前で見てきた会社、2つの例をご紹介します。
本物のブラック企業
法令違反の運送会社
まずは、実際に以前所属していた会社の例です。
もうすでに10年以上前に所属していた会社ですので、今では多少変わっているのかもしれませんが、20代のころ所属していた運送会社は今思うとかなりひどかった。
私の契約は正社員ではなく、契約社員待遇のドライバーでした。
勤務時間は朝の8:30から夕方17:30。
月曜日から金曜日までフルに働く契約でした。
この契約であれば、社会保険や有給休暇などほぼ一般の正社員と変わらない待遇になるはずですが、契約社員という形を利用してすべての待遇を正社員とは違う状態にしていたのです。
- 有給休暇なし
- 雇用保険加入なし
- 社会保険加入なし
- 厚生年金加入なし
- 残業代なし
- 賞与なし
- 昇給なし
- 昇格なし
これらすべて契約社員だから、という名目で与えてもらえませんでした。
有給休暇はなしなので、病欠してしまえばその分給料は減額されるし、配達が遅れて深夜に戻ってきても残業代は無し。
ブラック中のブラックだったんですが、それでも仕事自体がそこそこ楽しく、また気楽だったため長く続けてしまいましたが、今思えばもっと早く法令違反に気付いてそれなりの対処をすべきでした。
その会社は、私が退職すると同時に契約社員ドライバーを業績不振のため一斉解雇に踏み切りました。
困ったのは雇用保険すら加入してくれていないドライバーたち。
そのドライバーたちのために交渉し、なんとかさかのぼって雇用保険の手続きをしてもらい、解雇予告金にあたる手当と失業給付を受けられることができました。
今考えても相当なブラック企業です。
アルバイトだから有給休暇はない!
とか、契約社員だから社会保険はない!
とか、残業代もない!
という訳の分からない制度を採用している会社があったら、すぐにでも専門家に相談するか労基署に相談するようにしてください。
労務管理をしないIT会社
実際に一緒に仕事していた社員数10名程度のIT会社なんですが、こちらも超絶ブラック企業でした。
少数精鋭の会社なんですが、会社内に一人優秀なシステムエンジニアがいて、その人が会社の売り上げを支えている。
だから社長さんもその優秀なシステムエンジニアにすべての権限を与えていました。
これがそもそもの間違い。
優秀なシステムエンジニアは、技術や知識に関しては申し分ないのですが、いかんせん管理業務が嫌い、ドキュメントなどを残すのも嫌い。
だから自分の会社のメンバーの管理なんか一切しない。
残業しようが休日出勤しようが深夜業務使用が全くお構いなし。
その会社が請け負ったプロジェクトが、まさに燃えに燃えた大炎上プロジェクト。
優秀なシステムエンジニアは、あらゆる部門からの問い合わせやトラブル解消でイッパイイッパイ。
でも、大規模な案件を受注しているから、それ以外のエンジニアが総出で対応しなければ回らない。
エンジニアたちの業務は毎日深夜にまで及び、当然休日なんか関係ない。
1月で休みは1日とか2日。
ほぼ毎日会社に寝泊まりする状態が続いていました。
そのうち優秀なシステムエンジニア以外のメンバーがどんどん戦線から離脱していく。
一人目は、体力よりも先に精神がやられてしまい、プロジェクトの途中でうつ病を患い離脱。
二人目は、あまりのブラックぶりに耐えきれなくなり、プロジェクトの途中で会社を辞めて転職。
三人目は、プロジェクトの炎上ぶりに耐え切れずほかのプロジェクトへ移籍。
四人目は、プロジェクトはなんとか最後まで完遂したが疲れ果ててその後退職。
まさにボロボロの状態にまで追い込まれてしまいました。
今時、プロジェクトの炎上をエンジニアの労働力で対応しようなんてありえない話です。
36協定も関係ない、社員の健康なんて関係ない、社員の生活なんて関係ない、労務管理なんて関係ない。
会社の売り上げだけのため、一人のエンジニアのわがままのために引きずり回されてしまった社員たちが気の毒で仕方ありません。
これぞまさにブラックIT企業の典型というような会社でした。
ブラック企業を無くす
私たち社会保険労務士は、できるだけこのようなブラック企業を無くすために日々活動しています。
労働基準法を中心とした労働関係の法律は、確かに零細企業にとっては敷居の高い部分もありますが、日本で会社を経営する限り順守する義務があります。
2社目に紹介したIT会社のように、ブラック企業で苦しんで精神面をやられてしまうと、その後の人生にかかわります。
みんなが笑って働ける会社になるように、労使ともに改善していってほしいと願ってやみません。