会社を経営する側にとって社員を雇用する時、最も大きな負担となるのが社会保険料。
少子高齢化により年金や保険料負担がますます増え、社会保険料負担は上がり続ける一方です。
正社員として雇いたい、でも負担が増えちゃうからな・・・
毎月の社会保険料だけでも大変なのに、これ以上増えると経営を圧迫してしまう。
とお考えの社長さんは、保険料を軽減することが出来る健康保険組合への加入を検討してみてはいかがでしょうか?
健康保険組合
健康保険組合とは?
会社(法人)を設立したら社会保険への加入義務が生じます。
会社という組織を作ったら社長さん一人でも会社から収入を受け取る立場になりますので、社会保険に加入しなければイケません。
ちなみに、個人事業主の場合は、常時5人以上の従業員を使用しなければ社会保険の適用とはなりません。
話を元に戻しますが、会社を作れば社会保険に加入する。
その社会保険には大きく分けると2つあり、一昔前は政管健保と呼ばれていた協会けんぽ、もう一つが組合健保になります。
組合健保って何なのかというと、この組合健保も2つに分かれます。
- 1または2以上の適用事業所において常時700人以上の被保険者を使用する事業所の健康保険組合
- 被保険者の数が常時3,000人以上の適用事業所が共同して設立した健康保険組合
1は常時700人以上となっていますので、大企業が1社で設立している健康保険組合となります。
トヨタとかNTTとか大手の企業が運営している健康保険組合がコレです。
2の方は、同業種の企業が集まって加入し運営している健康保険組合です。
北海道コンピュータ関連産業とか関東ITソフトウェアというような健康保険組合がこちらになります。
健康保険組合に加入するためには?
ここからは1社で健康保険組合を設立できる大企業は一旦話の本筋から外し、中小企業の経営者向けにお話を進めていきます。
健康保険組合って会社を設立した時から加入できるの?
と思われるかもしれませんが、これは難しいと考えた方がいいでしょう。
多くの健康保険組合への加入条件を定めています。
前述した関東ITソフトウェア健康保険組合の加入条件はこちらに記載されています。
https://www.its-kenpo.or.jp/kanyu/kijun.html
こちらを見ても分かる通り、健康保険組合加入の条件は簡単ではありません。
協会健保に1年以上加入していること。
被保険者数が20名以上いること。
など起業したての会社がいきなり加入することは難しい条件となっています。
健康保険組合も厳正な加入条件を定めないと、運営に支障を来すことになるでしょうから、こればかりは仕方ありません。
ですので、起業当初は協会けんぽに加入し、数年後経営がある程度軌道に乗り始めたころに組合健保への加入を検討するとイイでしょう。
手続きはいろいろと面倒な面もありますが、健康保険組合に加入専門の問い合わせ窓口もありますし、わからないことは教えてもらえますので、それほど心配する必要はありません。
健康保険組合加入のメリット
健康保険組合加入のメリットはどんなものなのか?
- 保険料率が軽減される
- 多彩な検診を受けることができる
- 健康増進事業を利用できる
- 手厚い保険給付を受けることができる
何と言っても最大のメリットは保険料率。
協会けんぽの平成30年の東京都の保険料率は9.91%。
これが前述の関東ITソフトウェア健康保険組合なら8.5%になります。
どれくらいお得なのか?
こちらは同じような業種で構成されるTJKという健康保険組合のHPに掲載されている情報です。
http://www.tjk.gr.jp/recruit/recruit01.html
ざっくりと概要をまとめると、100人の従業員を雇った場合、協会けんぽと組合健保では590万円ちかい保険料の差がでるのです。
ですので従業員が多く保険料負担に苦しんでいる会社の取っては、大きなメリットになるはずです。
さらに健康保険組合は、他にも手厚いオプションが用意されています。
協会けんぽでは受けられないような検診や、ゴルフ場やテニスコートなどの福利厚生施設を格安で利用できる組合も多くなっています。
また、出産一時金や高額療養費の負担、配偶者の健康保険が無料で受けられたりと、下手な福利厚生施設を用意するよりも手厚いメリットが享受できるのです。
中には転職活動をする際に、組合健保か?協会けんぽか?を見ている転職者もいるようです。
転職活動者を引き付ける効果もあり、退職者を防止するメリットも期待できますので、健康保険組合の価値は非常に高いのです。
健康保険組合の注意点
ここまで見るとイイことずくしの健康保険組合ですが、本当にイイことだらけなのでしょうか?
さすがにそんなことはありません。
実を言うと健康保険組合の運営状況は、年々悪化しています。
少子高齢化で高齢者の拠出金が負担となり、健康保険組合を維持するのは難しくなっているのです。
実際に全国の生協(コープ)の従業員や扶養家族約16万4000人が加入する「日生協健康保険組合」が今年中に解散するという報道もあった通り、いつまでも健康保険組合を維持できるかどうかは不透明です。
そうなれば保険料率が上がる事も考えられますし、将来的に協会けんぽに戻ってしまうということもあるでしょう。
また、一度加入してしまうと脱退するというのはとても難しくなりますし、他の健康保険組合に移動することも出来ません。
健康保険組合は、経営者にとっても労働者にとっても非常に有益な制度なんですが、当然ながらリスクも内包しています。
決して目先だけの利益だけを考えるのではなく、将来的な目線で加入を検討してみて下さい。
【2018/9/28追記】
https://mainichi.jp/articles/20180926/k00/00m/040/017000c
このように健康保険組合の財政は、どこも芳しくありません。
経営者にとっても労働者にとっても有益な制度ですが、加入は慎重に検討すべきです。