社会保険労務士の資格を目指した理由はいくつかありますが、その一つの理由に以前ブラック企業に勤めてたという経緯もあるのです。
ちょっと昔の話になりますが、どんな企業に勤めていたかをお伝えします。
ブラック企業に勤めていた
なぜそんな企業に入ったか?
まず私がその企業に入ったのは大学卒業後2年が経過したころ。
ここではD社とします。
就職氷河期のロスジェネレーションだった私は、大学卒業後あえなく就職活動に失敗。
しばらく流浪の身、ていうか当時はニートなんて言葉もなくフリーターをしながら夢だけを食べて生きていた。
さすがにこのままではダメだ。
定職につかないと、と必死に探してたどり着いたのがD社。
応募要件は普通自動車免許を所持していることと健康なこと。
ただそれだけでその会社には入社できてしまった。
ただ正社員待遇ではなく契約社員待遇だったと覚えている。
どんな状況だったのか?
その仕事は都内のルート配送。
事務所自体は東京をちょっと超えたあたりの埼玉県に設置されていた。
最寄駅からは果てしなく遠く、駅から送迎の車が出ていた。
出勤は原則月曜日から金曜日の週5日。
朝8時に出勤し就業時間は原則18時。
給与は定額の20万円で残業代なんて言葉は一切なかった。
ただこれは仕方ないし残業代がない面に関してはそれほど大きな問題じゃないと当時は考えていた。
というのも、埼玉の事務所で荷物を積み込み都内各地の担当エリアへ配送に出かける。
当然都内の通行は渋滞状況に左右されるため、空いている時はあっさりと到着するが、混んでいれば平気で2時間くらいかかることもある。
そのため、配送を終えて帰着するのが18時を超えるなんてザラだった。
とはいえ、その分配送時間中に手待ち時間も発生するので、その分残業代に反映されなくてもそれほど違和感は感じなかった。
ただこの手待ち時間中も無線や電話で集荷の依頼が来ることもあり、今考えれば労働時間にみなされなければいけない時間だったんだろう。
それよりも最も大きかったブラックぶりが社会保険などの待遇面。
その会社は、正社員以外には社会保険の加入義務はない!と主張し、社会保険に加入させなかった。
健康保険も厚生年金も未加入だったのだ。
さらに雇用保険まで未加入。
今考えればあり得ない待遇だった。
さらにもう一つ酷かったのは有給休暇。
正社員じゃないからと有給休暇の付与もしなかった。
だから1日休むと1日分の給与が引かれてしまうため、同じ待遇の従業員は平日休んだ分は土曜日に出勤して補っていた。
さらなる大事件が起きる
配送業という職業に不安を感じ始めた私は、20代後半になると毎日悩み続ける日々が始まった。
将来への不安からか精神的にバランスを崩し、不眠も続くようになった。
このままではいけないと会社を辞めてIT系のスキルを学べる専門学校へと入校することになった。
しかしD社は雇用保険も加入してくれていなかった。
となると専門学校へ行っても生活費がない。
困っているとまだD社にいた元同僚から衝撃的な話を耳にした。
なんと自分たちが配属されていた事業所が業務縮小により閉鎖され、契約社員が一斉解雇されるとのことだったのだ。
元同僚たちは当然生活に困ることになる。
それなのに会社は雇用保険も加入していないし、解雇予告金も出さない方針だったようだ。
当時社労士でもなんでもなかった私は、その話を聞きつけ本屋で雇用関係の本を読み漁り必死に勉強した。
自分の分の雇用保険も必要だったのもあり、私が代表して会社と交渉することになった。
すると、さすがに会社側も社会保険の未加入や解雇予告金の支払いもしてないことに危険を感じていたようで、意外とすんなり交渉に応じてくれた。
これにより、契約社員全員に雇用保険をさかのぼって加入していただき、解雇予告金に退職金をプラスしたような手当てまで支払われることになった。
とても貴重な経験にはなったが、自分たちの無知っぷりにとことん呆れたことを今でも覚えている。
法律を知らないと損をする
今でこそインターネットが普及し、ブラック企業なんて言葉も定着したため、私の時のような不遇な思いをすることは少なくなっているんでしょうが、知らないものは損をする、弱い立場は損をする。
このことを痛感することが出来た。
経営者と労働者の立場は同じではない。
経営者は労働法に守られる訳ではなく、いつも苦しい思いをしているが、労働者も弱い立場。
労働者側がある程度知識武装しておかないと、質の悪い経営者からいいように使われてしまう可能性はある。
そんなことはあってはいけない。
私のような思いを労働者はしてはいけないし、経営側も認識不足で行ってはいけない。
その思いから社会保険労務士という資格を取ってみようという気持ちになったのです。
まとめ
ブラック企業というのは、経営側からもなくしていかなければいけないし、労働者側も明らかな法律違反であれば、主張して改善していかなければいけない。
ブラック企業を無くすための取り組みは、経営者と労働者双方が合意のもと進めていかないと前に進まない。
そんな取り組みの間に立つ社労士という仕事には誇りを感じている。
みなさんがブラック企業で苦しむことがないよう、これからも誠心誠意業務を遂行していきたいと改めて感じているところです。