政府の働き方改革法案の作成が着々と進んでいるようですが、その中に正社員に限らず契約社員まで裁量労働制の枠を広げるという考えがあるようです。
果たしてこの裁量労働制って一体なんなんだ?
これってブラック企業が実施する残業代逃れの対策なんじゃないの?
ここで裁量労働制とは何なのか?もう一度見てみましょう。
裁量労働制
2種類の裁量労働制
まず裁量労働制には2種類存在します。
細かく話すと2つもややこしいので、できるだけ簡潔な言葉で説明します。
その分、ちょっと抜けてるところがあるのはご容赦ください。
企画業務型裁量労働制
事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務。
これを実施するのには、時間を制限するのは大変なので労働者の裁量に任せますよ!
という制度です。
早い話が、かなり難しい業務とかややこしい業務の企画だ分析だをする専門的な人たちに限られた制度です。
例えば企業の経理業務などは確かに専門的な知識は必要ですが、経理ソフトに入力するような定型業務なのでこの企画業務型の裁量労働制は採用されません。
かなり特殊な制度だし、採用するには労使委員会が設置されている事業だとか採用にも複雑ですので、一般の企業ではほとんど採用されていないんじゃないでしょうか?
専門業務型裁量労働制
一方の専門業務型裁量労働制は、ある専門の業務に従事する人は、労働時間の特定が困難なので労働者の裁量に任せますよ。
という制度で、労使協定を結べば採用することが出来ますので、企画業務型よりも採用しやすい制度になってます。
そのため、一般的な企業で採用されているのは大抵こちらです。
では、この専門業務型の専門業務って何?
それはこちらの業務になります。
- 新商品や新技術の研究開発
- 情報処理システムの分析または設計の業務
- 新聞雑誌テレビなどの取材、編集
- デザイナー
- テレビなどのプロデューサー、ディレクター
- その他厚生労働大臣の指定する業務
6の厚生労働大臣の指定する業務というのがこちらです。
- コピーライター
- システムコンサルタント
- インテリアコーディネーター
- ゲーム開発
- 証券アナリスト
- 金融工学による金融商品の開発
- 大学教授
- 公認会計士
- 弁護士
- 建築士
- 不動産鑑定士
- 弁理士
- 税理士
- 中小企業診断士
これらの業務に該当しているのであれば、専門業務型裁量労働制が採用可能となります。
専門業務型裁量労働制を採用するには、対象業務に従事するにあたり1日当たりの労働時間数を算定して労使協定を結びます。
ですので、この業務に必要な時間は1日8時間と決めたら、4時間働いても8時間、10時間働いても8時間ということになると考えて下さい。
裁量労働制が採用されるとどうなる
裁量労働制が採用されると、原則労度時間は労働者の裁量に任されるということになります。
つまりは、与えれた業務を遂行していれば、労働時間は自由という考えもできるのです。
いつ出勤してもいいし、いつ帰ってもかまわまない。
ですが、これが実態と乖離していることが問題なんですね。
1日8時間で終わるような業務であれば、労働者にとって裁量労働制時間制は大きなメリットです。
でも現実はそううまくはいきません。
業務の負荷が高くなり、業務量が増えると、とても8時間では終わるはずがない。
となると果てしない残業の日々が続いてしまう。
それでも裁量労働制だから労働者の裁量に任せますよ!となると定額働かせ放題制度になってしまうのです。
あくまでも、算定した時間で収まる業務量でなければ労使協定は結べないんです。
システムエンジニアの仕事
システムエンジニアの会社では、よくこの専門業務型裁量労働制が採用されていますが、果たしてシステムエンジニアの仕事は裁量労働制に当てはまるのでしょうか?
システムエンジニアと一言で言っても多種多様な職種に分かれますが、あくまでも前述した条件にマッチしている業務でないと裁量労働制は採用できないのです。
システムエンジニアの仕事でマッチするとなれば、情報処理システムの分析または設計の業務、システムコンサルタント、ゲーム開発の業務、この3つくらいではないでしょうか?
上流の情報システム業務やシステムコンサルタントは、確かに裁量労働制が採用されてしかるべきでしょう。
ですが、一般的なシステムエンジニアや設計構築を担当するエンジニア、システム開発及びプログラマは、上述の条件には完全にはマッチしてません。
ましてや運用保守やヘルプデスク業務も兼ねているようなエンジニアはそもそも対象外。
システムエンジニアだからといって無条件で裁量労働制が採用される訳はないのです。
もし、自分が担当している業務が明らかに上記と異なっているのなら、一度会社の上司に相談することをお勧めします。
会社の上司に相談するのが難しい場合は、社会保険労務士や労働問題に詳しい弁護士、さらに悪質と思われる場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。
まとめ
裁量労働制はどんな業務にも採用することが出来たり、残業代を支払わずに永久に働かせることができるような便利な制度ではありません。
あくまでも、労働者の裁量に任せた方が円滑に回るような業務のための制度です。
残業代を削減したい気持ちもわかりますが、採用するための条件はキッチリと確認してから、取り掛かるべきです。