社会保険労務士資格の取得を目指そうという人は、社労士の需要や年収は気になるところです。
合格率数パーセントの難しい資格に挑戦するんだから、ある程度は報われないと頑張る意味がないと思うのも当然です。
社労士のリアルな年収をお伝えします。
目次
社労士の年収
厚生労働省の調査結果
まずは厚生労働省が調査している平成28年賃金構造基本統計調査から見てみましょう。
賃金構造基本統計調査って何?という方は下記のお堅い厚生労働省の文章をご確認ください。
賃金構造基本統計調査とは、主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数及び経験年数別に明らかにすることを目的として、毎年6月(一部は前年1年間)の状況を調査している調査です。
厚生労働省HPより引用
早い話が、1年に1回さまざまな企業のさまざまな雇用形態の人たちの賃金状況を調査し、取りまとめて報告しているものです。
こちらの詳細を掲載しているのが、e-statというサイトになり、こちらに詳細な職種別の賃金状況が掲載されています。
こちらから以下のデータを読み取ることが出来ました。
【企業規模10人以上】
職種 | 年収(毎月の支給と賞与をプラス) |
社労士 | 506万円 |
弁護士 | 704万円 |
公認会計士・税理士 | 907万円 |
【企業規模100~999人以上 】
職種 年収(毎月の支給と賞与をプラス)
職種 | 年収(毎月の支給と賞与をプラス) |
社労士 | 534万円 |
弁護士 | 639万円 |
公認会計士・税理士 | 687万円 |
他にも複数データがありましたが、いくつか抜粋させていただきました。
表に出ている公認会計士は残業代がかなり多く含まれていたので、あくまでも参考程度と考えていいかもしれません。
ですがこのデータから読み取れることは、社労士の平均年収は500~600万円程度ということです。
ですが、これはあくまでも勤務社労士のケースです。
開業の先生の年収は含まれていませんので、その点はご理解下さい。
転職時の社労士の年収は?
それでは転職するとき、社会保険労務士はどのくらいの金額で応募がかかっているか見ていきましょう。
こちらは実際に社労士で応募がかかったケースの求人案内です。
【案件A】
応募要件:労務の実務経験、労働基準監督署との折衝経験
年収 650~750万円 経験に応ず
【案件B】
応募要件:IT/ゲーム業界での採用経験、評価制度構築経験
年収 600~800万円 経験に応ず
【案件C】
応募要件:人事業務全般のご経験
年収 550~650万円 経験に応ず
【案件D】
応募要件:事業会社での人事労務経験5年以上
年収 400~700万円 経験に応ず
【案件E】
応募要件:採用のご経験及び労務の知識をお持ちの方
年収 550~650万円 経験に応ず
企業規模にもよりますが、500~700万円程度の募集がメインのターゲット層になっているようです。
案件Bのようなゲーム業界の場合、利益率も高く企業の業績も好調であれば応募の段階から年収も高めの設定で応募がかかってきます。
500万円くらすの求人は人事課長クラスの求人、650万円を超えるような求人は部長クラスの求人が多いようです。
中には800万円をこえる応募がありますが、800万円以上をこえるような応募は確実に管理職、役員クラスでの応募になっています。
ですので、社労士の年収は資格の価値ではなくいかに現状の企業で経験値を高めてきたか?によるところが大きいのです。
一部上場企業の人事部長、総務部長レベルの募集であれば、800万円どころか1000万円を超える応募もざらにあります。
一方中小企業の人事部長レベルであれば、500~600万円程度。
つまり平均年収あたりに落ち着くという形になります。
開業社労士の平均は?
開業社労士の場合、正確な数値の発表がありませんので、平均するとどの程度かは不透明な部分があります。
とはいえ、開業の場合はそれこそ月とスッポンでしょう。
事業を拡張して年商数億円をただき出している社労士事務所、社労士法人はいくらでもあるでしょう。
逆に定年後の年金のプラスアルファ程度に考えている社労士の先生は、年商数百万円レベルで十分。
開業の場合は、自身が置かれている立場や環境によって大きな差がでますので、平均値というものを取る方が難しいですし、ハッキリ言って意味のない数字ともいえるでしょう。
ちなみに我が事務所は現状数百万円規模の事務所です。
今後大きく拡張していきたい気持ちもあるのですが、諸事情によりこの規模であと数年運営していく予定となっています。
社労士は稼げる資格なのか?
ここまで勤務社労士と開業社労士の年収を見てきましたが、この結果を見れば一目瞭然です。
社労士という資格が稼げるか?稼げないか?ではなく、社労士という資格を利用して稼げるようになったか?ならないか?が大きな分かれ目なのです。
社労士資格を取得しても、中小企業の総務担当者とか、逆に人事労務部門の経験がない社労士であれば、資格を利用して転職を志してもかろうじて平均年収に届くか?届かないかが精一杯です。
一方、経営層での経験が豊富だったり、社労士以外でも英語やITのスキルを有している場合や、コンサルティング会社などで長年勤務しているような方は、アッパークラスでの転職が可能になってきます。
開業社労士でも同じこと。
ほそぼそと家業のように資格業をやりたいという人は、年商なんてこだわりがないでしょう。
逆に社労士という分野にとらわれず事業を広げたい!と考えている社労士の先生は、それこそ一般の企業の経営者と同様のリターンを受けることも可能になります。
社労士が稼げるという感覚でいては絶対に稼げません。
稼げる自分に社労士というブランドをどれだけ利用するか?という考えを持たないと資格を有効活用できないのです。
未経験者が社労士で収入を上げる裏ワザ
ですが、人事総務部門での実績がなくても社会保険労務士という資格を利用して、転職市場で高く売りぬく方法もあります。
それは、徹底的に中小企業を責めることです。
大企業の場合、組織は分業制になっています。
総務なら総務、人事なら人事、法務なら法務、経理なら経理。
ですが、中小企業にはそれぞれのスペシャリストを集める余裕なんてありません。
総務も人事も法務も経理も兼ね備えてくれるような人材を求めています。
そんな中小企業に社会保険労務士という資格をアピールすれば、大きな武器になるんです。
中小企業には有資格者の応募はそうそう来るものじゃないですからね。
大企業の人事部門の求人に資格だけある未経験者が言っても、あっそと突き返されるのが関の山。
それが中小企業に行けば、キラキラの眼差しで見つめられることもあるんです。
もちろん、中小なので大企業並みの年収というのは難しいかもしれませんが、それでも資格を持っていればかなりの金額で売り込むことが可能になってきます。
未経験者が社労士資格で転職し、年収を上げたいのなら大企業というブランドとは初めから戦わないに限ります。
社労士にプラスアルファしたいスキル
社労士で収入を上げるためにもプラスアルファしておきたいスキルをご紹介します。
- IT技術
- 英語
- 会計・経理
- 経営
- マネジメント
社労士の手続き業務もどんどんIT化が進んでいますので、昔ながらの紙手続きしかできないようでは、今の企業には受け入れられません。
パソコンやOffice系の操作はもちろん、人事労務系、給与計算系のソフトは使いこなせて当たり前。
さらにそこにプラスアルファでCRMやERPといった上級の知識も有しているとさらに幅が広がり需要は高まります。
中には総務部長が会社の情報システム部の部長を兼ねているというケースもあるようです。
人事の専門家がITにも詳しければ、このように選任の情報システム部長を設ける必要がなくなりますので、大きなコスト削減につながります。
外資系の会社であれば、やはり英語は必須。
日系企業でも楽天やユニクロを運営するファストリテイリングなどは英語が公用化されていますので、かなりの武器になるはずです。
さらに中小企業の人事労務部門の担当であれば、会計・経理の知識があると重宝されます。
前述したように、中小企業は一人でなんでもやってほしいので、人事だけでなくお金の管理も一緒に出来る人が求められます。
経営に携わったことがある人も需要が高まります。
社労士は、社長の味方ですので、リアルな経営を知っている人は、会社経営をするうえで大きな財産になるはずです。
最期にマネジメント能力ですが、社労士という業務の特性上これは欠かせないスキルと言ってもいいでしょう。
数名単位でも構いませんので、人を管理して取りまとめた経験は極力現在の会社で積んでおくべきです。
本当に収入を上げたいのなら
社労士資格で本気で収入を上げたいのなら、勤務ではなく開業社労士として活動すべきです。
今では一人で社労士法人を立ち上げることも可能になりましたので、社労士法人という形でもいいでしょう。
開業はもちろんリスクを伴いますが、資格業は元手もかからず在庫も抱えないビジネスですので、失敗の危険性は低いのが大きなメリットとなります。
開業で広げていくには、もちろん苦労は必要ですが、勤務のように上限はありません。
成功すればいくらでも上を目指すことは可能です。
社労士で稼いでやる!という志を持っている人は、勤務という殻に閉じこもってはいけません。
まとめ
結局のところ稼げる資格なんてないというのは、もはや周知の事実です。
弁護士だって公認会計士だって税理士だって司法書士だって、資格というブランドだけで稼げるほど甘くはありません。
資格で稼ぐためには自分自身を高めなければいけません。
資格にすがりつくのではなく、自分というブランドに資格を上手く融合させることができれば、自然と資格ビジネスで稼げるようになるはずです。