有給休暇(正しくは年次有給休暇ですが長いので有給休暇と記します)は、労働基準法39条に定められた休暇の制度です。
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
これは労基法第39条1項の条文ですが、早い話が入社して6ヶ月、8割以上休まず出社していたらその後の1年間に10日間有給の休暇を取らせてあげなさいというものです。
法律で定められた休暇なんですが、労働者と使用者(以後社長)とで全然捉え方が変わってしまうものなのです。
有給休暇の捉え方
労働者側からの有給休暇
労働者からすれば有給休暇は労働基準法に定められた当然の権利です。
半年勤めれば年間10日間与えられ、6年半以上勤めればMAX20日間与えられます。
ゴールデンウィークのある5月や祝日の多い9月などは、出勤日数が20日間に満たないこともありますので、その月に全て有給休暇を使用すれば丸々1ヶ月休めることになる。
実際、付与された有給休暇は社員の当然の権利とばかり、取得された日に全部使い切っちゃうという方も結構な割合でいるようです。
とはいえ、日本の有給休暇取得率は約50%程度となっていますので、大抵の労働者は半分も使い切れずに無くなっていくのが実情です。
取り難い雰囲気があるとか、忙しくて取る暇が無いとか、いろいろ理由はあるのでしょう。
また通常の会社では、当日風邪を引いてしまっただとか、急に体調を崩した、家族が病気になったというような場合、事後申請での休みも有給休暇として処理されるはずです。
計画的な有給取得はしないが、体調不良による有給使用は多いという方もいるでしょう。
ただ、有給が付与された日に全部使い切る「これって労働者の当然の権利」、病気で休んでも有給処理してくれるから給料は減らない「これって労働者の当然の権利」とお考えであれば、ちょっと社長さん側の立場に立って考えてみて欲しいのです。
社長から見た有給休暇
社長さんからすれば、なんで有給休暇なんて制度があるんだろうか?というのが本音だろうと思います。
以前、ある会社の社長さんがその思いをブログに綴ったところ大炎上してしまい、エントリーを削除し謝罪したという事がありました。
でも、社労士という立場からすれば社長さんの気持ちも理解できるのです。
まず日本という社会を考えて見ましょう(ここでは土日休みの企業を例に取ります)。
日本には土日休みのほかに、国民の祝日というものが用意されています。
じつはこちらのプレジデントの記事にもあるとおり、日本の祝祭日の数は世界でもトップの日数なのです。
その他にも年末年始に関しては、会社自体が休みということで特別休暇を指定している企業も多く、休日数は諸外国と変わらない、むしろ多いくらいなのです。
こんなに休みがあるのにまだ有給休暇をとらせてあげなきゃいけないの?
もちろん長年働いてくれている社員が病気で休んだときなんかは、有給を使って生活が困らないようにさせてあげたい。これはほぼ大半の社長さんはそう考えているはずです。
ですが平日にちょっと休みたい、仕事いくのが面倒くさかった、ディズニーランドは土日だと混むので平日休んで行きたい。
このような理由での休みに対して有給休暇を与える事は、社長さんとしては違和感を感じるようなのです。
だって働けるのに働いて無いじゃん。ノーワークノーペイが労働法の原則なんじゃないの?という意見が出てしまうもの。
仮に労働者のあなたが、夫婦共働きで忙しいから家事をこなすために家政婦を雇ったとします。
その家政婦が、今日は体調悪いから、といって休んだとき、有給でいいよとなるでしょうか?
普通は払いたくないはずです。だって今日何もやってないんだから。
まぁ大抵の家政婦は時間給や日当制なのでこの例えは的を得てないかもしれませんが、休みに対してお金を払うというのは同じような違和感があるということです。
まとめ
有給休暇は労働者の当然の権利なのは間違いありません。ですが、権利を強く主張して強引な取得の仕方や常軌を逸した取得の仕方は控えるべきでしょう。
この日はどうしても人が足りない、だから頼むからこの日の休みはずらして欲しいという場合は、労働者側も譲歩すべきでしょう。
会社を退職することが決まったから、引継ぎもそこそこに余ってる有給を明日から全部使い切るという行為も社会人としてはスマートじゃありません。
もちろん有給休暇という制度は積極的に利用すべきですし、全部使いきれるのなら使うべきです。
ただ取得する時期とタイミングを見計らい、極力会社に負担をかけないように心がけることも有給休暇を取得する労働者のマナーなのではないでしょうか?
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