定年後の嘱託社員として再雇用されたトラック運転手が、正社員と同じ仕事をしているのに賃金格差があるのは不当だ!という訴えを起こしていた。
一審では原告の訴えを認めた形になったが、二審では逆転敗訴。
なぜ定年後の再雇用による給与の引き下げは、不当ではないという判断になったのだろうか?
定年後の再雇用
逆転敗訴の理由
一審では労働契約法の20条が再雇用でも適用されるため、賃金格差は無効という内容だった。
労働契約法の20条って何かというと、不合理な労働条件の禁止。
有期契約労働者と無期契約労働者が期間の定めがあるからって不合理な労働条件を結んじゃダメだよ!という内容の条文。
なぜこれに抵触する事になったかというと、定年後は機関の定めのある嘱託社員として雇用していたから。
つまり有期と無期で同じ仕事なのに条件違い過ぎじゃね?という内容で一審は原告勝訴となった。
しかし二審では、定年後の再雇用は一般的な話で社会的にも容認されてるから違法じゃないんじゃね?という結論に至り、原告側が逆転敗訴。
確かにそういわれれば、定年後の再雇用では給与が下がるのが一般的といえば一般的で、ごくごく普通の話ではある。
再雇用後の賃金は?
こちらのエントリーでもお伝えしているが、60歳で定年退職し、賃金が一定以上下がった場合、高年齢雇用継続給付という制度が用意されている。
そのため、給与自体はガクンと下がるかもしれないが、ある程度は給付金から補助される。
その制度を見越して企業側も60歳以上の再雇用の場合は、賃金を低下させるような給与形態を取っている。
今回この判決が最高裁でひっくり返るようなら、各企業は60歳以上の再雇用に関して賃金規定の見直しが必要になるだろう。
あるべき形は?
判決はどうなるのかわからないが、60歳以降の再雇用の賃金は今後どうしていくべきなのか?
決して簡単な話ではなく、あらゆる面から見ていかないと結論は出ない。
同じ仕事
60歳を過ぎて再雇用した社員が他の社員と本当に同じ仕事なのか?
一度退職し再雇用する事により、多くの社員は役職の肩書が変わり、ある程度の責任からは解かれる事が多い。
そんな方々は、むしろある程度給料を落としてくれた方が気楽なのかもしれない。
一方、特に役職や肩書きもなく、60歳前と全く同じ仕事なのであれば、再雇用という制度を悪用しているようにしか感じない。
年金の支給時期
現在60歳の男性の場合、昭和31年頃の生まれになるため65歳前から年金が貰える世代。
この方々は60歳を過ぎてある程度たてば年金が入るため、それほど困らないだろう。
一方あと数年すれば昭和36年4月生まれ以降の方々は60歳に突入する。
その世代は65歳にならないと年金は受け取れない。
この世代は60歳から給料を下げられると5年間も年金受給まで時間がかかるため、賃金低下は深刻な問題だ。
住宅ローン
40歳過ぎて長期ローンで住宅を購入された方々は、70歳を過ぎてもローンを払い続ける事になる。
住宅ローンの負担は家計に大きくのしかかる。
この人達も60歳以降の減給は深刻な問題になる。
このようにいろんなタイプの方々がいるが、残念ながら企業をそのすべてのタイプに対応する賃金体系を作り上げることは出来ない。
結局のところ、60歳過ぎて給料が下がる事を見越したライフプランを自分で考えないといけないという結論になってしまう。
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