電通の新入社員の自殺は多方面で大きな話題になっている。
まさかあの電通で?新卒社員の就職したい企業No1の会社でなぜこんなことが?
中小企業に限らず、大企業でもなぜ労務管理が形骸化してしまうのだろうか?
大企業の労務管理
大企業では?
電通に限らず、株式を公開しているような企業は、どこもCSR(企業の社会的責任)というお題目をWEBサイトに掲げている。
そこにはコーポレートガバナンスや環境への取り組み、社員の労働環境の整備等、一見すると素晴らしい活動をしている企業のように見受けられる。
だが実態は全く違う。今回の電通の一件がまさにその典型だ。
WEBサイトに大々的に掲げているCSRなんて単なる対外的アピールに過ぎない。
大企業の実態は、WEBサイトのそれとは大きく乖離しているのだ。
大企業の労働環境
筆者は一部上場企業に入社した経験は無いが、システムエンジニアという立場で、多くの大企業で勤務させていただく事が出来た。
そのため、一部の大企業の労務の実態はある程度知っている。
その中で感じた点を指摘していく。
責任感の重み
大企業と中小企業の社員では、同じ社員でも仕事で負わされる責任感の重みが大きく異なる。
なぜなら大企業は元請けであり、中小企業は下請けだからだ。
元請けの大企業は、何十億、何百億、何千億というプロジェクトを請け負うこともある。
中小企業は、その大規模プロジェクトのおこぼれをいただく立場。
大企業の社員は、若い頃から元請けという立場で仕事をし、大プロジェクトを担っているという意識を強く持たされる。
一方中小企業の社員は、下請けのため最悪へまをやってしまい逸注しても、他の企業で変わりが効く。
一社のへまにより大プロジェクトそのものを逸注してしまう事はほぼないため、大きな責任感は負わずにサラリーマン生活を過ごしていく。
そのため、大企業では20代から現場の最前線に立たされるが、中小企業の社員は30代以降になってようやく一線に立てるようになる。若い頃からの鍛え方が全く違う。
形骸化する36協定
大企業の社員は強い責任ある業務を負わされる為、残業なんて当たり前になっている。
でも労務管理がしっかりしているから大丈夫なんじゃ?
と思う人は現場を知らない。
大企業の社員は、下請けの企業が納品した成果物をチェックして承認する必要がある。
時にその量は膨大になるため、通常の勤務時間じゃとても追いつかない。
昨今は、テレワーク化、シンクライアントが進んだため、自宅での勤務も可能になっているが、皮肉にも技術の進化が仇となり自宅に帰ればいつでも仕事が出来る環境を提供してしまった。大企業の社員は土曜も日曜も関係ないのだ。
上司の立場
そんな労務状況は上司が改善すればいいじゃないか!と思うかもしれないが、大企業の役職に就くような人達は、自分の権利を守るために生きてきた人達だ。
課長は次長に怒られないために、次長は部長に怒られないために、部長は取締役に怒られないために、取締役は社長に。。
常に自分の保全が一番大事な人種なのである。
そんな人達が最優先に守りたいものは、上司に睨まれないようにプロジェクトを滞りなく進めること。
だから部下の健康は残念ながら二の次になってしまうのかもしれない。
口では「あんまり無理はするなよ!残業はほどほどに!」と口言いながらも、「ちょっとくらい無理してでも確実に成果を上げてこい!俺らの若い頃はそうだった!」これが大企業の上司の本音なのだ。
そのためハッと気付いた時には部下はボロボロになり、手遅れになってしまうケースが出てくる。
労務管理を正常にするには?
大企業という組織上、社長を中心とした経営陣が社員に直接語りかけることは出来ない。
社員にとって社長なんて雲の上の存在であり、そんな人の話は心に響かない。
だからこそ上司が率先して労務管理を徹底しなければいけないが、前述したようにそんな上司はほとんどいない。
しかし、中には熱い気持ちを持った人間が大企業にも必ずいる。
現場で大きな声をだし、残業削減の徹底、休日出勤削減の徹底といったことは、そのような熱い人材を探し出し、日々うるさいくらい声をかけられる要員を見つけることが重要だ。
法律で定められているから仕方なく安全管理者や衛生管理者を任命するという投げやりな形ではなく、そのような人材をアサインする事が不要な超過勤務を抑制する一番の近道かもしれない。
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